こみみかわら版バックナンバー

私の仕事は『一級 水先案内人』です

246一級 水先案内人

水先案内人の仕事とは


外国船が出入港する際に、その船に乗りこんで、船長に代わって操船を指示する仕事です。 このことを専門用語で嚮導(きょうどう)と言います。



きっかけ


私は岡山県出身で、外国航路の船長でした。 アメリカ、南太平洋、東南アジアの国々へ、トヨタ クラウン五千台を積載し、輸送していました。 港では、可航水域や潮流などの港湾事情を知らないと安全な航行が出来ませんが、港に精通した水先案内人のおかげで安全に出入港できます。 ロサンゼルスのロングビーチの狭い航路を若いパイロットと嚮導したとき、その見事さに「凄い」と思い、私も各国の船長に頼りにされる水先案内人になりたいと思いました。



道のり


船長経験者ということで一級水先案内人の道を進みました。 座学三ヶ月、実習六ヶ月を終了して国家試験を受験できます。
試験では自分が働く港の海図を白紙に書き込みます。 私は七尾港の海図を百枚以上練習しました。 そうすることで海の底が見えてきます。 合格してから更に一年ほどの見習い期間があり、ようやく独り立ちできます。 この資格はその港だけに通用する資格になります。
船長経験がない場合は二級・三級の道もありますが、操船できる船舶の大きさが制限されます。



意外な話


水先案内人は平清盛の時代から存在しますが、現在の形態になったのは明治初期からです。 我々は通常パイロットと呼ばれます。 パイロットと言えば飛行機操縦士を連想しますが、実は水先案内人が先だったのです。



大切なこと


船に乗り移る瞬間です。 航行中の船舶に、パイロットボートで接近して、船体に掛けられた梯子に飛び移ります。 大きい船だと九メートルくらいを登ります。 七尾港の場合は岸から十八キロ、一時間ほど沖合いで乗船します。海が荒れていると、転落や、船体に挟まれて死亡事故に繋がることもありますので、ジムで筋力トレーニングと十分な睡眠を心がけ体調管理をしています。



喜び


船長は同じ船を操船しますが、パイロットは毎回船が異なります。 船の性能や癖・積載量など船長から確認し、天候や風向きを読み、速度・アンカーを打つタイミング・タグボートへの指示など、毎回緊張感があります。 無事接岸し、船長の 「Good Job Thank You !」 の一声で、水先案内人の仕事を果たしたという安堵感に包まれます。



これから


水先案内人は船長経験者しかなれなかった時代がありましたが、現在は海技系の高専や大学を卒業すれば道が拓かれています。 七尾港には三人のベテランパイロットが居ますが、将来を担う若き水先案内人が誕生することを願っています。