こみみかわら版バックナンバー

『輝け!郷土の星』 柔道の戸澗 望愛さん(天神山小5年)

輝け!郷土の星-柔道の戸澗さん

来る8月30日 全国大会に石川県代表で出場!


6月に行われた全国小学生学年別柔道大会石川県大会にて5年女子40キロ級で見事優勝した望愛さん。柔道を始めたきっかけは小2の時、ロンドンオリンピック金メダリストの松本薫選手(石川県出身)の試合をテレビ観戦していた時、『かっこいい、自分もやりたい』と強い衝動に駆られ、テレビを指さし「これやりたい」とお母さんに頼んだと言う。
お父さんは「望愛はこのスポーツが何なのかさえ知らなかったのだから松本薫選手の姿が琴線に触れ、心に火がついたのだろう」と振り返る。お母さんは「ほんとかいねぇ」とビックリしたが七尾市内の柔道教室、全日本柔道少年団七尾分団へ見学に連れて行き、その日から簡単な練習を体験し、松木監督の指導を受けることになる。



野生的闘争心


七尾分団では幼稚園児から小学6年までの児童が、火曜日、金曜日の18時30分から七尾武道館でみっちり練習を行う。準備体操、回転運動、補強運動、寝技、立ち技、乱取り、投げ込みと続くが弱音を吐く子はいない。しかし能登の気質なのか気がやさしい子が多い。そんな中で望愛さんが一際目を引く。県大会の団体戦は4年生1名、5年生2名、6年生2名の編成だが男女、階級は関係なく選抜する。今年選ばれた望愛さん、7月の大会での対戦相手はなんと70キロの男子だった。しかし怯むことなく立ち向ってく。一度畳へ上がると闘争心にスイッチが入り表情が一変する様はあの松本薫選手のようである。



熱い想い


嬉しかったことはと質問すると、「県大会優勝」それと「練習で今まで投げられなかった相手を投げたとき」とはにかみ、練習の無い日は弟とゲームしているという望愛さんは本当に可愛い女の子である。それでも柔道で強くなりたいという志は強く、お母さん相手に毎日寝る前15分間は投げ込みの練習を続けている。


望愛さんの活躍で弟も柔道を習い、家族で全日本柔道選手権のビデオを見てイメージトレーニングをし、練習や各種大会に出かける。一人の少女の熱い想いが家族全員を巻き込み絆を深め、七尾分団から全国大会出場という初めての快挙に松木監督も期待を隠さない。


将来はどうなりたいの?という質問にも、笑顔ではにかむだけで大きな夢は語らず、ただ目の前の試合に勝つことだけを考えて練習しているという。そんな彼女が一度畳の上に立つと、格闘家としての風格すら漂ってくるのである。柔道着姿の望愛さんにはなんとも不思議なオーラを感じるのである。


編 集 後 記


7月8日(土)取材に七尾武道館へ訪れました。
練習日は通常、火曜日と金曜日の午後18:30~20:30ですが、
前日7日(金)は大相撲七尾場所が隣の体育館で開催されていたため、
土曜日の午前中に変更になっていました。


さっそく、松木監督とお父さんにご挨拶し、望愛ちゃんとご対面。
柔道着が似合う可愛い女の子というのが第一印象です。
話かけると、ニコニコ笑顔ではにかみながら応えてくれ、
この時点では、普通の小5の女の子という感じでしかありません。


しかし、取材を進めていくうちに、
望愛ちゃんに不思議なオーラを感じてきます。
何がこんな可愛い女の子の闘争心を搔き立てるのか・・・。


柔道を始めるキッカケはオリンピック金メダルの松本薫選手。
柔道を知っていたわけではないという。
たまたまテレビで松本選手の眼光鋭く野獣的な闘争心むき出しの試合を見て、
彼女の中の何かが目覚めたようである。


「かっこいい! 自分もやりたい!」
その瞬間、画面を指さし「これやりたい」と両親に訴えた。


両親は、「この子何いうとらん」「ほんとうかいねっ」と驚いたという。
その時、望愛ちゃんはまだ小学校2年生なのだ。


お母さんが柔道教室を調べると
七尾では全日本柔道少年団七尾分団が唯一の教室であると知り、
さっそくそこへ連れて見学に行くことになる。


七尾武道館2階の柔道場は2面あり広々とした恵まれた環境である。
見学に行ったのだが、見るだけでなく体験させてもらうことになった。
柔道場の周りを走り、回転運動をし、少しだけ受身の練習もしてみた。
入団することに何の憂いも無かった。


七尾分団には市内各小学校下の幼稚園~小6までの児童が集まる。
現在35名の団員がいる。
底辺はこれだけいるのに、七尾市の場合、中学生の柔道人口は極めて少ない。
理由は市内の中学校で柔道部があるのは七尾東部中学だけなのだ。
どうしても柔道をやりたい生徒は校区を変え七尾東部中学へ進むしかない。
大方の生徒は中学へ進む時点で、違うスポーツに変更を余儀なくされているのである。
昔はどこの中学にも柔道部はあったものだが、少子化の中で仕方がない。


さて、望愛ちゃんだが、
小2、小3とコツコツ練習に励んできた。
3年生の終わりくらいから頭角が現れる。
県大会の団体戦は4年生、1名、5年生2名、6年生2名で編成するが、
男女、階級が問われない。当初監督は男子での選抜を考えていたが、
戸澗選手の実力と負けん気を評価し最終的には彼女を選抜した。
7月に行われた錬成大会では、対戦した相手は70キロの男子だった。
普通なら本人が「怖い」とか、「もう諦めた」となり
指導者も「怪我をしないよう無理するな」となるのだが、
一旦畳に立てばどんな相手にも闘争心が剥き出しになり立向うのだ。


8月に出場する、全国小学生学年別柔道大会は5年生、6年生だけの学年別、男女別、体重別の大会なので望愛ちゃんとしては十分に力を発揮できるのではないかと期待がかかるのである。


しかし、七尾分団としても、松木監督としても初めての全国大会であり、
全国のレベルは未知数である。
全国の柔道教室では指導者により柔道スタイルが様々にあるようだ。
七尾分団では「しっかり組んで投げ、一本を決める」というスタイルである。
あわよくばと期待もするが、まずは初出場なので気負わず全国をじっくり見てきて欲しい。


大会は8月30日(日)
山梨県甲府市 小瀬スポーツ公園 武道館で開かれる。
戸澗選手の初戦は、栃木県代表と京都府代表の勝者との対戦から始まる。


松木監督は、戸澗は柔道向きというか格闘技向きの性格をしている。
負けん気が強く、きかん子や これは教えても教えられない部分で、立ち技のセンス、寝技の努力、それらを下支えする闘争心の強さが最後の勝負を決めるが、そこが並み外れて強いものが備わっているようだ。天性のもんやと思う。
畳の上に上がるとスイッチが入るようだ。とコメントします。


松木監督率いる全日本柔道少年団七尾分団は、昭和41年、前身の山本道場からスタートして現在に至っています。
全国大会出場者を輩出するのは今回が初めての快挙であり、8月3日に分団OBの山崎智之市議随行で、宮崎博七尾市柔道協会会長、松木尊紀法(ときのり)監督、戸澗望愛選手、戸澗選手のお父さんの5名で七尾市教育長を表敬訪問して来ました。


また戸澗選手は、
北信越強化指定選手として県内女子選手5名の内の1人として選出されています。


武道館を取材した時、女性の指導者がいました。
実は松木監督の奥様も現役時代に大変活躍された名門津幡高校出身の選手でした。現在は内灘中学校の教諭で、柔道部の監督をしており、(現在は育休中)
北信越大会や全国大会へ内灘中学を導きました。


優れた選手が誕生するためには、
本人の努力のみならず指導者、施設、家庭など含めた
練習環境が整っていることが大切だと思いました。


取材を進めるうちに、
望愛選手の父方、母方の二人のおじいちゃんが共に柔道をやっていたという情報が入ってきました。特に母方のおじいちゃんは七尾分団前身の山本道場の門下生であったということです。今、孫の望愛さんの活躍をことのほか楽しみにしているそうです。


しかし、本人はおじいちゃんたちが柔道をしていたことは知りません。
おじいちゃんから柔道の話も聞いたことなければ、勧められたこともありません。


それなのに、松本薫選手のテレビを見て
小学2年生の女の子が「これやりたい」と言ったということは、
理性ではなく、血のなせる業(わざ)のような気がします。


搔き立てるものの正体、それは血脈であり、
「血の繋がり」ということの不思議さを改めて感じました。


平成27年8月8日(土)取材
こみみ情報局 津田 均


『輝け!郷土の星』 陸上3,000mの町 桟吾くん(田鶴浜中3年)

輝け!郷土の星-町くん

8分58秒16で見事優勝!


5月に行われた石川県陸上選手権国体予選少年B(中学3年生と高校1年生)で優勝した桟吾くん。9分を突破した瞬間だった。中学生で9分の壁は更なるステージへの登竜門なのだ。陸上を始めたのは小学校2年生から、キッカケは、毎日一緒に遊ぶ仲良し3人組、2人は陸上の城山アスリートクラブに所属し、時間が来ると田鶴浜中学校グラウンドへ練習に出かける。1人残される桟吾くんはいつも寂しい思いでいた。そんな桟吾くんに友達が見学に来ないかと声をかけてくれた。ユニフォーム姿で練習している友達の姿がとてもかっこよく、1人でつまらない思いをしているのならここでみんなといっしょに走りたいと思った。練習は1周400mのグラウンド5周することから始まった。「正直キツイと思った」「たいそかった」それでも友達も一緒だから頑張れたという。



勝負へのこだわり


6年生の時チームが駅伝で石川県1位になり全国大会へ出場、結果は31位だった。「くやしい!」勝負へのこだわりが目覚めた大会となる。それから朝練習を始め、ほぼ毎日30分父親に伴走してもらう。すると記録が伸びてきた。中1の県大会では記録は9分46秒65、これでは6位入賞すら出来ない。しかし記録に悔しさを感じたという。順位より記録をいかに伸ばすかだ。山口監督は中長距離は持久力とスピードが必要だと話す。持久力はコツコツ練習すれば良いがスピードは天性の素質も必要だという。練習では生徒の走りを見ながら監督の檄が飛ぶ。よほど心が強くないと挫けてしまう程の檄だ。大丈夫かと心配になる。泣きながら走っている子もいる。桟吾くんにも容赦なく飛ぶ檄。それにしっかりと応えて走る。何が辛いか聞くと「監督に怒られることです」と笑顔で即答。監督との信頼関係は厚い。グラウンドを20周した後、すぐに1周400mを全力疾走だ。これはきつい!子ども達は今にも倒れそうな顔と息をして戻ってきた。そしてすぐに筋トレと続く。
去る6月27日の県大会、悪天候だったが全国大会出場の標準記録8分59秒00を目指した。結果は9分2秒64、ラスト100mのデットヒート、3位だった。「悔しかったけど今度は負けません。記録を出せば順位は付いてくるし、負けてはいけない相手は自分自身なのです」と新たな決意をした。



地域力


昨年、全国中学駅伝で8位入賞を果たした。「今までで1番嬉しかったことです」と桟吾くん。田鶴浜中学陸上部は過去にも長距離で全国入賞者を何名も輩出している。いまや長距離の名門と言えるだろう。これは指導者・家族・地域が一丸となって選手を励まし育てていく伝統があるからだ。優秀な選手を各地から集めるのでなく、ごく近所の普通の子ども達がよき指導者・家族・地域の励ましがあればトップアスリートとして育っていくのである。子ども達の才能は計り知れない。