こみみかわら版バックナンバー

温故知新 第9回 野鳥保護


時国公政さん(79歳)

今年7×9で63歳ですよと豪快に笑う時国さん、元気の源は野鳥保護というライフワークを50年以上も続けているからか、御年79歳にはとても見えません。

今回は環境省希少野生動植物種保存推進員で石川県希少生物研究会の代表を務める田鶴浜大津の時国さんにお話を伺いました。

能登に棲む猛禽類の現状を知ることで能登の自然の素晴らしさを知り、能登で暮らす人々が今まで以上に故郷の自然を大切に守っていかなければならないと訴えます。

冒険家

幼少の頃から山野を駆け巡り遊んでいた時国さんは高校卒業後、航空自衛隊自衛官として全国各地に勤務しました。大自然に触れたいと網走のレーダーサイトに志願し任務の傍ら知床の大自然の中でヒグマと遭遇したり、オオハクチョウを観察したり、時には流氷に乗れず陸に取り残された子供のアザラシを背負い数百メートルも引きずりながら海まで運ぶなど野生動物と関わってきました。

またヒマラヤ、アンデス、チベット、南アフリカでの山岳登山にも出かけており、世界中を冒険し続けた植村直己さんのような冒険家の一面もあります。そんな時国さんも長男ということで故郷へ戻ることになり役場に勤務します。

そこで目にしたのは七尾西湾でカモなどの渡り鳥が鉄砲で撃たれている光景です。シベリアと東南アジア結ぶ重要な中継地として能登半島には希少な渡り鳥も飛来します。そこへ県外から狩猟を楽しむ人たちが和倉温泉に泊まり込んで鉄砲を撃ちまくる姿に、「ふるさとの生き物に何をしてくれる ! 」という怒りが込み上げました。

野鳥の会vs猟友会

七尾西湾におとりのカモの模型を浮かべ集まったカモを撃って楽しむことを止めてもらいたいと申し入れ衝突します。相手は一時役場にまで押しかけ来て「時国をだせ!」と喧嘩腰にまでなりましたが、話し合いを重ね猟友会七尾鹿島支部の協力も得て平成10年に七尾西湾鳥獣保護区を設定することが出来ました。

また野鳥公園の建設を石川県に提唱しました。当初設計にはブランコや滑り台が配置されていましたがこれでは野鳥が安心して飛来できない旨を告げ、イギリスの世界的野鳥研究家ニール・モースさんと、アメリカ人のバード・サットン教授に観察小屋の屋根に草花を植えることなどアドバイスを頂き出来たのが現在の野鳥公園です。

平成10年11月3日に行われた落成式に急きょ谷本知事が見えられたちょうどその時、日本では珍しいハイイロペリカンがすぐ近くに飛来して驚きました。まるで野鳥公園のお祝いに来てくれたようでした。



絶滅の危機

能登を故郷として繁殖しているオオタカ、ハヤブサ、サシバ、ハチクマなど猛禽類が近年著しく減少しており、時国さんは大変心配しています。

コイやボラなどを捕食し里山里海に姿を見せる準絶滅危惧種のミサゴの巣は能登全体で280あったものが現在40にまで、七尾市と中能登町では97から11にまで減っています。

原因の一つは松くい虫防除の農薬散布ヘリコプターによる風圧で巣上のヒナや卵が吹き飛ばされてしまうからです。かつては関係市町と日本鳥類保護連盟石川県支部と綿密に打ち合わせをして飛行を選定していましたが、現在は県が空散範囲を営巣地に精通していない業者に任せきりにしているため被害が続出していると言います。

能登にいた朱鷺もいなくなりました。失われた命は作ることは出来ません。このままでは能登半島からまたひとつ希少な鳥がいなくなります。開発と生態系保全、今この故郷に住む人がどう考えるか問われています。



ミサゴ