こみみかわら版バックナンバー

温故知新 第13回 観光ボランティアガイド


佐野藤博さん(72歳)

平成6年、石川県で金沢市に次いで2番目に七尾市観光ボランティアガイド「はろうななお」が立ち上がった。

今では24団体、約1200名のボランティアガイドが県内各地でその土地の魅力を案内している。現在26名で活動する「はろうななお」の会長、佐野藤博さんにお話を伺った。

観光ガイド

駅前のミナクルビル1階に案内所を開設し、花嫁のれん館と一本杉通り・長谷川等伯ゆかりの山の寺寺院群 ・日本百名城の七尾城跡 ・和倉温泉七福神福々めぐり ・和倉温泉お祭り会館と5つのコースを案内している。

ここ2年間はコロナ禍で減少していたガイドもこの6月から動きが出てきた。7月以降本格化すればベテランから新人まで26名がフル稼働しても足りないのが悩みだ。ガイドの平均年齢も高くなる中、最近若い世代もメンバーに加わり希望をつなぐが、ボランティアなので仕事を持つ若い人は毎日とはいかない。

退職して仕事に就いていない60代前半から始めても良いガイドに育っていくので、興味のある人はぜひ仲間に加わって欲しいと話す。

プロ意識

ボランティアと言っても人前に立つ時はプロ意識を持って案内する気構えが大事だと佐野さん。

のとしん時代の先輩で前会長の藤井さんに誘われた。今年で10年を迎えるが決して社交的でない自分がガイドを始めたので周りが驚いた。初めてのガイドは一本杉だった。先輩についてマニュアルを見ながら教わったがうまくいかなかった。最初はだれでも必ず失敗する。2度、3度、回数を重ねるうちに自然と覚えていった。

人気のコースはなんといっても年間3万人近くが訪れる七尾城跡だ。昭和9年に国指定史跡に、平成18年に日本百名城に認定された七尾城。本丸駐車場から遊歩道へ一歩足を踏み入れると力強い杉並木が迎え、静寂な空間は往時をしのばせ幻想的な雰囲気が漂う。足を進めると苔むした四段の野面積みの石垣が現れ、観光客はこぞってその壮大さに圧倒され息を呑み、標高300mの本丸跡にたどり着くと目の前には七尾湾や能登半島を一望する絶景が広がり皆感嘆の声を上げる。

上杉謙信に「絵像に写し難き景勝までに候」と言わしめた眺望や歴史を魅力あるガイドで伝え広めていきたいと知識を深く掘り下げる。そして知識だけを話すのでなくガイドの人柄や個性を活かて、客層に合わせたアドリブや気を引くジョークを心掛けている。

最前線に立つ



ガイドをやって見えてくるものがある。私たちが暮らす能登・七尾、こんなに自然豊かで濃厚な歴史や文化を持つ土地は少ない。しかし地元に生まれ育っていても足元を知らないで暮らしている人が多い。

1544年七尾を訪れた京都東福寺の禅僧彭叔守仙(ほうしゅくしゅせん)が記した「独楽亭記」には麓から一里もの間に千門万戸の商家が立ち並んでいたと記されるほど七尾は栄えた町であった。

今過疎化が進み人口減が加速する中これからの七尾をどうしていくのか。交流人口を増やし経済を活性化させ、移住者を増やし定住人口を増やすと言うが、そのためにはその土地に魅力がなければならない。能登にはその潜在的な魅力は十分にあると思う。

能登の玄関口七尾の魅力を発信する役割は行政だけではない。一人一人が自分の暮らす地域の歴史や文化を伝承し、語り部となっていけたらいいと思う。

七尾市観光ボランティアガイドも限られたコースではあるが、最前線で観光客と直に触れ合いその一翼を担う。故郷を愛し、おもてなしの心で、七尾の将来を思い、精一杯やっている。