こみみかわら版バックナンバー

第40回 「輝け!郷土の星」創作和菓子の 関軒 十萌さん、小坂 美尋さん(鹿西高校2年)


第9回全国和菓子甲子園で銅メダル、審査員特別賞

突然の話でしたが直感的にやりたいと思ったんです。昨年6月、エントリー締切り1週間前に石川県菓子工業組合青年部長から家庭部岡山先生に大会エントリーの要請が入ります。1週間では難しいと思いながら部員に確認すると、十萌さんが手を挙げました。二人一組が出場条件です。十萌さんは家庭部でクラスメイトの美尋さんに声をかけました。

結果は県大会、中部ブロック大会で優勝。全国100校以上が参加し各ブロック代表の18チームが競った8月の和菓子甲子園決勝大会で見事に特別賞に輝きました。この大会は単に美味しい和菓子を競うものではなく、自分たちが暮す町の文化や歴史、特産品を通じて故郷への想いを表現しなければなりません。制限時間1時間45分、製品力、表現力、ネーミング、技術力、プレゼンテーションが審査されます。

おりひめ帷子(かたびら)

出場の多くは調理科のある高校です。家庭部ではクッキーや洋菓子は作っていたものの和菓子の経験はありません。それでもやってみたい!と思った十萌さん、お祖母さんが茶道を嗜み日常に和菓子があり、小さい頃から和菓子に興味を持っていたそうです。そんな十萌さんの情熱が周りを動かします。

仕事の合間に様子を見に来た青年部長の羽咋の「佐吉庵」さん、二人の一生懸命に取組む姿に帰るに帰れなくなり、仕事の予定を変更して指導したそうです。また中能登町の「みうら屋」さんと「のと屋」さんが細やかな支援をしてくれました。家庭部で交流のある中島菜農家の松田さんには餡と寒天に色付けするため、能登むすめ、中島菜、小菊かぼちゃのパウダーを作ってもらいました。

染織部にも所属する十萌さんは盛夏の代表的な和菓子「夏衣」の寒天で作る衣の部分を能登上布の反物に見立てます。菓子銘にこだわり悩んでいた時、たまたま徒然草の授業で麻の着物を帷子と呼ぶことを知り、繊維の町と能登上布が連想できると閃き「おりひめ帷子」と名付けました。



ふるさとが詰まった力作

ひと夏の体験

夏休み、空調設備が無い学校の調理室では辛いだろうと岡山先生は近隣施設の調理室を手配します。器具により火力が違うことが逆に火加減を見る練習になったと笑う美尋さんは、1mgの砂糖を加減し味見を続け、十萌さんはカラー野菜の粉末の量を加減し色合いを追求しました。

そして地元菓子職人7人の前で本番さながらの練習を見てもらった時、寒天と餡の扱い、器具の扱い、分業ではなく声を掛け合い二人で協力しあう事、プレゼンも作業も笑顔を絶やさず、爪を切って衛生面に気を配る、全員から厳しい指摘を受けます。こんなに頑張っているのに…。正直この時が一番へこみましたと二人。ここで投げ出せない!と指摘をノートに書き留め、素直に前向きに課題を改善し決勝大会へ臨みました。

純白のコックコートやエプロン姿が集まった会場で、ひときわ目を引く能登上布の作務衣。故郷を想い、仕上げた「おりひめ帷子」は、最高の仕上がりとなり受賞。多くのお陰様を強く実感した和菓子甲子園となりました。



関軒さん・小坂さん