第64回 「輝け!郷土の星」やり投の青木朋矢くん(鵬学園3年)
JOCジュニアオリンピック第15回U18陸上競技大会で優勝
1m65㎝、84㎏、がっちりした体格の朋矢くん。10月に愛媛県で開催されたジュニアオリンピック陸上競技大会で60.66mを投げ全国制覇を成し遂げた。
夏のインターハイでは62.24mを投げ6位入賞だったので、記録は満足できないが、それでも全国大会優勝の嬉しさは格別だ。
七尾市小学生連合運動会100m走で若林スポーツ奨励賞の記録を出し、七尾東部中学で陸上競技を始めた。中3で400mと砲丸投で石川県2位になっている。
陸上でもっと高みを目指したいと鵬学園に入学した。投てき種目は、やり、砲丸、円盤、ハンマーとあるが助走して投げるのはやり投だ。自分の持ち味である走りも活かせるのではと考え、やり投を専門種目に選んだ。
孤軍奮闘
今や強豪校の鵬学園陸上部、体力とメンタルは島元コーチが全部員の強化を図るが、やり投の技術を指導してくれるコーチがいなかった。
朋矢くんはユーチューブで公開されている練習方法や一流選手の動画を参考に練習メニューを考えた。投てき、助走、ウエイトなどトレーニングの種類、強度、量、頻度などを手探りで練習した。試合が終わると結果を振り返り練習方法を修正した。
手の角度のほんの少しの違いでヤリに影響が出る。どれだけ練習をしてもイメージしたヤリが出ないときには、動画を撮って、良かった時の動画と見比べ、学校でも家でも一日中やり投げの動作を繰り返した。
陸上は順位を競う競技であるが、記録として数字が出るので個人目標が設定しやすい。高校では65mを目標にして粘り強く練習に励んだが、常に自分との戦いでもあった。
落ち込んだ時に諦めたらそのまま落ちていくだけだったと言う朋矢くん。どんな時にも諦めずに一人コツコツと励んで手に入れた全国優勝だった。
伝統を創る
ゼロからのスタートで指導者がいなくても結果を出した朋矢くんの後ろ姿は、チームメイトに全力を出して取り組めば何でもやれることを示した。強くなれないのは良い指導者がいないからという愚痴はだれも言えなくなった。
先駆者となった朋矢くんは4人の後輩を指導する。やり投は全身を使って投げる競技で、足の向き、腕の高さ、ヤリの角度など自分の経験を教える先に思う事がある。それは鵬学園陸上部が伝統校となるための礎を後輩たちに繋ぎ託したいとの思いである。
昨年、走高跳で亀田実咲選手が全国大会優勝し、今年もやり投で全国大会優勝ができた。2本の柱が立ったが伝統校と言うにはまだまだ新参者である。来年も全国大会で入賞者を出して欲しいと後輩に期待する。
島元コーチは恵まれた体格でもなく、指導者がいない中、悩み、研究して、自分で技術を磨いてきたからこそ、試合ではぶれない強さがあると言う。
負けには負けた必然があるが、勝ちには偶然勝利することがある。インターハイは62mと自己ベストで嬉しかったが6位だった。今回60mで記録は伸びなかったが意義ある全国優勝をした。
朋矢くんの不断の努力が運を引き寄せたのだ。