こみみかわら版バックナンバー

第68回 「輝け!郷土の星」 弓道の加賀心和くん


第19回 全国中学生弓道大会 優勝

8月に愛知県体育館で開催された全国中学生弓道大会で石川県勢初の男子個人優勝を成し遂げた心和くん。予選で8本中5本以上を的に当てれば決勝戦へ進む。

例年の明治神宮弓道場から会場が変わり射場が屋内となった。雰囲気が異なりより緊張が高まる。28m先、36㎝の的、半数の矢を当てる事が難しい。44名中12名が決勝へ進んだ。心和くんは8本中7本だったが、8本中8本が一人、もう一人8本中7本の選手がいた。今年はかなりレベルが高い。

決勝は射詰(いづめ)で行われる。一射ずつ矢を放ち失中した者は除かれる。的中しても次の一射に残るだけだ。心を張りつめたまま出番を待つ。1本目が終わり五人残った。2本目、ふるいにかけられ三人になった。これで金銀銅が確定し少し安堵する。3本目が始まる。一人目が外す。二人目も外した。そして心和くんの番だ。

さっきまで確実に当ててきた二人が目の前で外す。 より緊張が高まる。ここで外せばまた同じメンバーで続けなければならない。そうなればメンタルが崩れる。早く当てたい。でもあせって外さないように…。更に緊張が高まった。姿勢を整え、弓を構える。ゆっくりと狙いを定め、矢が放たれた。 静かな空間にパン!と音が響く。 真ん中より少し上に的中。 優勝が決まった。

練習のたまもの

弓道は中1から始めた。部活を選ぶ時に陸上かバトミントンにしようと思っていたが、クラス担任の安部先生が弓道部の顧問だった。そして中能登中弓道部を永年指導している加賀賢成コーチが心和くんの祖父だということもあり、やはり「これしかないか!」と自分の意思で決めた。

1年生は体力づくりから始まり3年生が引退する夏から弓矢を持つことが出来る。試合では技術と精神力が勝負になる。そのためコーチはまず1本目を絶対に当てることを指導する。心和くんはコーチの指導を素直に受け止め練習した。それは長年やってきた人の言葉に重みを感じるからだと言う。

予選は1回に4射を2回行う。油断か緊張か、なぜか3射的中して4射目を外すことが多い。大会前は4射目を外さないことを意識し気迫の込もった練習を重ね、その成果が見事に大舞台で発揮された。



キャプテンとして

52名の弓道部。キャプテンとして思っていた事は「正射必中」弓道部のスローガンを忠実に実践することだったと言う。意味は「正しく射れば必ず当たる」という当たり前のことのようだが、その心は、「的に当てる事でなく、正しく射る事に集中する」弓道の心構えを示す。

的に当てたいとか、外したら恥ずかしいとかという気持ちを抑えて、自分と向き合い、精神を統一し、心が無になった時、自分と弓と的がひとつに結ばれていく。 矢を放っても姿勢を変えず的を見て心を残す。的中しなくとも、原因はすべて自分にあるのでまた自分を見つめていく。

キャプテンとして言葉に信憑性を持たせ後輩を指導するためにも、自らが実践し結果を出した。的を狙うことだけが目的ではなく、合わせて精神力を鍛える弓道。 

凛とした立ち姿で、一つ一つの所作をゆっくり静かに進め、不動の心で弓を引く心和くんである。