第90回 能登島 祖母ヶ浦
在所名の由来
飛鳥時代、女性の天皇である持統天皇が女性の僧を各地に派遣し、
生活文化の向上を図っていたんだ。そんな尼僧の一人がこの地に来て、
点在する村人を現在の場所に集め漁業や農業を教えたんだ。
人々は尊敬し御祖母様(おんばさま)と慕って呼んだんだね。
それが祖母ヶ浦の由来なんだよ。
昔の暮らし
半農半漁の生活をしていたね。ここは七尾北湾に突き出て、
あいの風も下り風も通り抜けるので良い漁場がいくつもあるんだ。
二人で仕掛ける小規模の定置網が並び、刺し網、採介藻などで蛸やイカ、
ナマコ、サザエ、あわび、天草、もずく、エゴなんでも獲れたよ。
木の「とろ箱」に魚貝を入れて、毎日2~3箱くらいを定期船で七尾の作事町へ卸していたもんだよ。
御祖母様のことをもう少し話しておかんとね。
即身仏の行をしているんだ。地面の中に入り竹筒で空気を取り込んで
禅定の内に亡くなっていくんだ。その間、鈴を鳴らすのだけど
7日間とか10日間鳴っていたと伝わっているよ。
それを伝え聞いた比叡山天台宗の5代目座主、智證大師がこの地を訪れ祠(ほこら)を建て、
人々にお参りするよう勧め、それが在所の専正寺の始まりなんだ。
能登島で一番古いお寺で、天台宗で24代、浄土真宗に改修してから
25代という由緒あるお寺なんだよ。
寺にある御祖母様の木像は、御祖母様が自ら彫ったもので、形見として残して下さったんだよ。
在所では15年前にお墓も新しく整備し、専正寺では大晦日は御祖母様の
法要を行ってから除夜の鐘が鳴らされるんだよ。
現在の祖母ヶ浦
民宿が6軒あるけど、鰀目、長崎と一緒に岐阜県の中学生の
体験学習を受け入れているんだ。釣り、塩づくり、刺し網、
イルカウォッチング、魚のさばき方など体験するんだ。
毎年5月から6月にかけて千人以上の生徒が来てるけど、
自然豊かな環境を活かして交流人口を増やし、
地元の若い人も活躍できるような場をもっともっと創らないといけないと感じるこの頃だよ。
まぁの一言
持統天皇と御祖母様、小さな事にとらわれず、
みんなが幸せになるように尽くした女性。
大きく広い心、利他の精神、素敵ですね。