こみみかわら版バックナンバー

第114回 七尾市湯川


在所名の由来

一軒だけある湯川温泉宿の龍王閣は、江戸時代の湯治場だったんだ。
この温泉は在所を流れる崎山川から湧き出ているんだよ。
川の中から湯が出ているので湯川になったんだね。
火傷など皮膚病に効く、昔からの秘湯でね、
鎌倉時代の古文書にすでに湯河村と書かれているんだよ。

昔の生活

谷間の集落なので平地が少ないんだ。
それで山を開墾したら石灰を含んだ赤土でね、
そば、ごま、ごぼうを植えてたけど、
ごぼうに適した土で長くて美味しいごぼうが採れるんだ。
湯川と隣の岡町は、ごぼうの元祖名産地だったんだよ。
ごぼうの七日炊きという料理があって、囲炉裏の鍋に七日間炊いて、
すった胡麻をまぶして、報恩講様の時のごちそうの一品として出すんだよ。

石崎と輪島の海女がカゴを担いで来ていたけど、魚と米の物々交換だったね(笑)。
越中の人も着物や床の間の飾り物を売りに来ていたね。
母さんたちが何人もで組んで松任へ稲刈りの出稼ぎに行っていたけど
土産にスイカを買ってきて貰うのが嬉しかったなぁ。

ホウダツ

裾に大小のトンネル水路が何本もあるんだよ。
田んぼを広げるのに崎山川を付け替えしたのと、
川から取り入れた水を田んぼに引く水路を山裾を掘って作ったんだ。
普通はマンポと呼ぶけど在所ではホウダツと呼んでいるんだ。
明治時代から工事が始まったんだけど、その職人が宝達村の人たちだったんだ。
宝達の人が何十年もかけて掘っていたのでホウダツと呼ばれていったんだね。

これから

兎、狸、狐、猪のほかに、最近は熊、鹿、猿まで現れるんだ。
耕作する人が減って山や畑が荒れたら獣が入って来たんだね。
子どもの頃は貰い湯したり、半客と言って罠を仕掛けてもじなや
兎を捕獲した家にみんな集まって鍋にして楽しんだもんだよ。
若い人に獲り方や、さばき方を伝える必然性もない時代だけど、
そんな昔の生活様式を残しておこうと、多目的コミュニティーセンターを
建てて在所中から民具を集めて展示したんだ。
湯川に来て昔の暮らしや自然を満喫して温泉に入ってもらえれば嬉しいね。
この地に合った村おこしを探しているけど、高齢者も多いので、
のどかな里に、なごやかに暮らしていかれればと思っているんだ。

まぁの一言

気持ちが穏やかになる、
日本の原風景を感じる在所。