第127回 七尾市白鳥
町名の由来
ここは昔から港がありカモメやウミネコなどの白い海鳥が多く集まるんだよ。
聞き伝えによると傷ついて弱っていた大きな白い鳥を
在所の老翁が救って手当てしたけど死んでしまったんだ。
その鳥を背後の伊掛山の麓に祀ったことから、この地を白鳥と呼ぶようになったそうだよ。
昔の在所
在所の真ん中を流れる川が江泊町と庵町の境界なんだ。
昔は江泊町の白鳥と庵町の白鳥と別々の在所だったんだけど
70年程前に一緒になって今の白鳥になったんだよ。
だから在所にお宮さんが二つあるのはその名残なんだね。
人が住んでいた所に後から境界が引かれたのか、
魚場をめぐって江泊と庵がせめぎ合った結果それぞれの住人が
移り住んだのか歴史的背景はわからんけど、二つの町会を股にかけた在所というのは珍しいよ。
おかげで川を挟んでお寺の門徒も、選挙の派閥もはっきり色分けされていたね(笑)。
子供の頃は七尾に行くにも早朝から隣の江泊まで歩いて
定期船で2時間以上かけて行ったけど一日がかりだったよ。
定置網で獲れたブリやタラなどは祖母さんや母親が沢野町の
栢戸まで通じる山中の羽坂道を籠担いで七尾に運んだんだ。
それが唯一の現金収入なんだけど代金は盆暮れに支払われていたんだ。
それと烏帽子(えぼし)制度があって一致団結、協力して暮らして来た歴史があるんだ。
私も烏帽子親には実の親以上に経済的にも手厚く面倒を見て貰ったんだよ。
今では烏帽子親子も少なくなったけどね。
これから
沖には岸端定置網と白鳥定置網があり若い人達も頑張っているよ。
白鳥定置が大漁だと在所は朝から活気づくんだ。
近年は青年会や子ども達が少なくなっているけど、左義長、春秋の祭り、
恵比寿祭り、盆踊りなどの在所行事は何とか継承しようとみんなで頑張っているんだ。
それで獅子舞の蚊帳も5人用から3人用に小さくしたんだよ。
在所の中を通る県道は車がすれ違い出来ない程の狭い道で危ないんだけど、
海岸に新しいバイパス道路が出来て来年には開通するんで楽しみにしているんだ。
35世帯あるけど、65歳以上が47人、以下が45人、子供11人、
高齢化が進むけど人情味ある良い在所なので何とかしようと前向きに思っているんだ。
しほの一言
浜風に柿の葉が揺れ、三色のカキ餅が並ぶ。
小さな幸せがいっぱいの在所。