こみみかわら版バックナンバー

第147回 中島町河内


町名の由来

山に囲まれていてその中を流れる川沿いに人が住むとそこを河内と名付けるのではないかと思うよ。白山市の旧河内村は手取川と直海谷川の合流点だし、穴水の河内には山王川に支流が何本も合流しているし、ここも熊木川と河内川が合流する場所なんだ。川の内にある在所で河内。本当の由来はわからないけど、地形的には共通しているので頷けるんだよ。

昔の在所

山の木で暮らしを立てて来た在所だよ。山をたくさん持っている家を「おやっさま」と言ってね。その「おやっさま」が毎年1枚の山を切るんだ。それで1年間の生活が出来たのだよ。切出した山に植林し50枚山があれば50年サイクルで循環していくんだ。山師が山を眺め木の石高を見積もり売買するんだ。

河内には「おやっさま」が何軒もあるのでその木を切ったり、山から運び出したりと木こりや歩荷(ぼっか)の仕事が切れることがなく続いたんだ。山道に枝を敷いて「きんま」というそりに丸太3本積んで滑らせたり、1本ずつ縦に担いで山を降りていたね。それや炭焼きで現金収入を得てたんだよ。それと手に職をと大工や左官を目指すんだ。

交通手段が無いからどこにも出れず、男は在所に分家し、女は全員在所の中に嫁ぐからみんな親戚になっていくんだ(笑)。釶内地区にお寺が五つもあるのは山の木のおかげで財力と材料と職人が揃ったからではないかと思うんだよ。

現在の在所

戦後テレビに冷蔵庫と生活が贅沢になり山を3枚売っても4枚売っても足りないし、外へ出た若い者は戻らんし、在所の中は年金暮らしの年寄りばっかりで地元負担の伴うような事業は出来なくなったよ。

そんな中、在所最後の囲炉裏で300年以上灯し続いた火様を守ってきた中谷さんのおばあちゃんが亡くなる時にまた一つ大事な遺産が消えると心配したけど、お隣の岩穴さんの娘婿でお医者さんの森田さんが受け継いでくれ本当に感謝してるんだ。森田さんご夫婦が河内の自然を愛していてね、田舎暮らしを満喫してもらう民泊の計画もあるらしいので明るい話題だね。

10月には真宗の御崇敬(ごそうきょう)という津幡から七尾までの範囲で200年以上続く大きな法会の宿寺が36年ぶりに釶内地区が受け持ち、今回は河内の託因寺で行なわれるので火様の火でろうそくを灯したいと思っているところなんだよ。

あきこの一言

大蛇淵と岩穴の伝説を聞き坂道を歩く。
大きな欅、川の流れ、静かな空気、心穏やかなり。