こみみかわら版バックナンバー

第61回あなたの仕事は?「コーヒーマイスター」窪 丈雄さん


豆の味を超える薬味

私の仕事は「コーヒーマイスター」です。
窪 丈雄(くぼたけお)さん(49才)
仕事歴 3年

コーヒーマイスターの仕事とは

一口で言えばプロのコーヒーマンです。
コーヒーの深い知識や技術でコーヒーの美味しさや、コーヒーの持つ様々な価値を多くの人に知って頂き、コーヒーを活かした生活を提案していく仕事です。

一杯のコーヒー

コンビニで気軽に挽き立てのコーヒーが飲まれる時代になりました。コーヒーの消費量が年々増えており嬉しい事だと思っています。私は更にコーヒーの持つ力、様々な効用を知って頂き生活の中の楽しみのひとつに加えてもらえればと思っています。プロとしてより幅広い知識と高度な技術を身につけるためブラジルのコーヒー農場へ出かけました。たった一杯のコーヒー、それがこんな山の中で大変な作業の中から生まれてくるんだと感慨を覚えました。昨年、日本スペシャルティーコーヒー協会よりアドバンスコーヒーマイスターの称号を頂きました。認定資格で石川県では金澤ちとせ珈琲の岩本さんと私の二人だけで全国で百三十名います。

減っていく喫茶店

父の代からのパチンコ桃太郎を引継ぎ経営していましたが、この業界も競争が激しく大手資本と消耗戦を続けていくより、早めに店を閉めることが正解だと経営判断をしました。そんな時、母がコーヒーでも習ってみたらと勧めてくれ、北国文化センターの教室でコーヒー博士こと金沢大学の廣瀬幸雄先生に学びました。母の血でしょうか、私の中に眠っていたものが目覚めたのです。コーヒーの奥深さは知れば知るほど興味が尽きませんでした。母が経営する中央茶廊は昭和二十八年開店で今年六十二年目の喫茶店です。七尾の喫茶店も全盛時代からみると随分少なくなっています。手伝いでお店に入ると親子三代で来て頂ただいているお客様、ここでお見合いをしたというお客様など様々なご縁で結ばれていることを知り、この母の店を残したいという思いが出てきました。「よし、やってやろう!」昔の価格のままで、味と質の研究を深め更に美味しいコーヒーを飲んで頂こうと覚悟を決めました。生産者の顔が見えるブラジル原産の豆を厳選し、気温、湿度を考慮して焙煎し、心を込め丁寧にドリップします。その人に合ったコーヒーを創り出し、共に語り合えるそんなお店を目指して、喫茶店として根を張り続けていきたいと思っています。



かなわない味

コーヒーは生鮮食料品だと思います。原産国も種類も味も様々で、さらに同じ豆でも入れ方や保存期間で苦味、酸味、甘みが変化します。原料としてどんなにおいしい豆を使っても、どうしてもかなわない味があります。それは誰に入れてもらえたかということなんです。母のお客様は母が入れたコーヒーが一番良く、それは関係性という薬味が入るからだと思います。コーヒーを通じて多くの人が繋がっていく、そんなコーヒーの魅力を伝える伝道師となり七尾の文化の一つにコーヒーも根付くよう頑張ります。



中央茶廊 ☎0767‐53-0580
 
2015年 取材