こみみかわら版バックナンバー

第71回私の仕事は「石材加工業」です


百の家族の、百の想いと形

私の仕事は「石材加工業」です
芋塚 隆彦(いもづかたかひこ)さん(50歳)
仕事歴28年

石材店の仕事とは

私の場合、お客様の想いを形に仕上げられるように設計から基礎工事・施工まで対応しています。
特にお墓作りに関しては、宗教、風習・家族など多岐にわたることを説明させて頂き、
ご理解を頂いた上で設計に取り掛かっています。

時代と共に

近年、生活スタイルが多様化している中、墓じまいや合祀などのご相談も多くなってきました。人は昔から大自然や死に対して畏敬の念を抱き祈りを捧げてきました。時代が変り祈りのスタイルが変化しても、その根幹は変っていないのだと思います。

しかし現代はあまりにも忙しく、日々の生活に追われ、いつしか大自然の恵みの中に活かされて、生きているということを忘れてしまいがちです。そんな時に病と向き合ったり、人の死によって改めて自分の暮らしや生に向き合うことがあります。お墓を建てるということも、そんな機会の一つだと思います。人生において「気づき」を持たれたとき、宗教や、今のライフスタイル、未来への営みなど、お客様と一緒にお墓を通じて未来を真剣に話し合います。このようなことも今の私の大切な仕事の一つだと思っています。



矢田町の工場

お墓ディレクター

永平寺禅僧の学問所として始まった愛知学院大学を卒業し実家に戻ります。父は技術にこだわり指導してくれました。若い私は機械化の必要性も感じ、時には父と議論をしながらも父の元で技術を身につけ現在に至っています。創業は曾祖父で山積の石屋からのスタートでした。祖父、父の時代は日本の成長期でもあり、人口も増え、神社の鳥居や奉納品の依頼も多く活気がある時代でした。そんな時代は個人の拘りはなく、伝統の形を重んじて、削り、磨き、細工、彫刻して、現地での取り付け施行をどんどんやっていました。



時代が進み、当時分家した家でお墓が必要になってきています。分家された家はお寺さんとのお付合いは本家ほどではないことも多いようで、仏教的なことから法律にかかわることまで質問や相談があります。明治に制定された墓埋葬法の制度が平成に入って改正され、定められた場所以外にお墓を建てることは禁じられています。そんな法律を知らないでお墓を建てたり、また無宗教だという方や、各宗教宗派でも色んな違いを知らないでお墓を建てて困ったという事例も出てきています。今、お墓を取り巻く環境は大きな曲がり角に来ており、日本石材産業協会ではお墓ディレクターという検定資格制度を設けて正しい知識、適切なアドバイスを出来る人材の育成にも取組んでいます。

昨今は石屋のみならず葬祭に関わる方までがこの資格を取得して、幅広くお客様に正しい知識をお伝えしていこうという気運が高まっています。お墓は買うものでなく、作るものだと思います。100家族あれば100通りの想いがあり、ご家族と共に考え、話し合い、血族という家族の絆を、お墓を建てる時に石工の技術を入れて向き合う。そんな時間が私にとっても大切で嬉しい時です。石材店の墓石ディレクターとして更なる精進を重ねていきたいと思います。



矢田町工場 芋塚石材店 ☎0767-53-0612
2016年取材