こみみかわら版バックナンバー

第70回 私の仕事は「酪農家」です


敷かれたレールに乗ってみたら・・


私の仕事は「酪農家」です
福井 和幸(ふくいかずゆき)さん46歳
仕事歴25年

酪農家の仕事とは

私の場合は、
自然環境に恵まれた故郷能登の大地に良質な牧草を育て、

おいしい牛乳を作るため
ホルスタイン種の乳牛を種付けから出産、飼育、搾乳までの工程を
個人規模の農場としてシステム化
できるよう日々の業務を通じて研究開発しています。

牛に引かれた人生

物心ついたときにはすでに牛との生活でした。

祖父と父が
戦後の食糧難の時代に酪農を始めようと
開拓地であるここ鹿島台に入植しました。

当時は
何軒か酪農をしていましたが今は私の家だけです。

小学生から手伝いをさせられましたが、
なんて大変な仕事だなぁ
と思い声を掛けられるのが嫌でしょうがなかったけど、
祖父が厳しかったのです。

小学生でトラックを、
中学生ではトラクターを運転していました。
もちろん牧場内ですよ。(笑)

高校進学の時、
酪農するなら北海道へ行けと祖父の一言。

祖父の敷いたレールの上を
牛に引かれて行ったようなものです。

酪農学園大学付属高校とその短大で近代的な酪農を学びました。

日々勉強

卒業後
実家に戻り酪農家としてスタートしますが、
北海道で学んだ技術と父の技術のギャップにショックを受けます。

牛に餌を与え乳を搾るという行為は同じですが、
生産や品質の管理がまるで違いました。
それで一つ一つ改善改革を始めますが、父は口出しせず任せてくれました。

実践の中で経験を積み努力をしていても様々な問題が生じます。

日々の仕事に追われ学びが及ばない時は、
獣医師や関係機関の職員から教えてもらい解決の糸口を探します。

また農業青年のグループや地元の酪農家との交流を通じて
情報交換をする中で自分の考える酪農経営を目指しています。



将来の夢

福井牧場では
乳牛27頭、子牛16頭飼育しています。

品質の良い乳をより多く絞るためには牛の健康が重要です。

個性を知って弱い所を改善するため血統を選び人工授精させます。
分娩も状態を確認しながら立会い、難産で引っ張り出すこともあります。

子供を産んで初めて乳牛となり、
4、5回出産すると乳量がピークとなり1日40キロ~50キロを絞ります。

朝夕2回搾乳しその前後に餌を与えますが、
牛は4つの胃袋があり数え切れない微生物や原虫が棲んでいます。

あんな大きな体を草で維持できるのもそれらと共生しているからです。
そんな原虫の働きも考えて何種類もの餌を配合します。

将来的には
牛が自由に歩きまわれるフリーストールという形態の牛舎に出来ないか、
また通りすがりの観光客が車を止めて牛を見ていますが、
そんな人たちに何か別のサービスが
提供できないのかと色々と想いは巡ります。

子供の頃
嫌でしょうがなかった酪農でしたが、
今思えばあの手伝いこそが酪農家としての
魂が植え付けられた原点だと思います。

導いてくれた祖父に感謝し、
能登でも酪農家が存続できるように爪痕の一つも残しておきたいと思います。



鹿島台 ㈲福井牧場  ☎0767-66-1245
2016年取材