こみみかわら版バックナンバー

第81回 私の仕事は「蕎麦職人」です

たかが蕎麦、されど蕎麦



私の仕事は「蕎麦職人」です。
久木 信雄(くき のぶお)さん(68歳)
仕事歴 15年


蕎麦職人の仕事とは


蕎麦職人の仕事とは、私の場合は契約栽培の農家から仕入れた蕎麦の実の美味しさを壊さないように、心を込めて自家製粉し、手で練り、手で押して、手で切っていく、手作りにこだわった蕎麦を地元の食材と合わせてお出し致しております。


蕎麦好きが高じて


今年で15年目ですが、53歳の時に脱サラでこの世界に入りました。元々蕎麦が好きで食べ歩きしていたのです。大阪に転勤になった時は、京都、奈良、滋賀県まで美味しいと聞けば食べに行っていました。家内と京都保津川下りをして亀岡の蕎麦処拓朗亭で食べた蕎麦があまりに美味しくて感激したのです。それで旅の帰りに実家が空き家になっていることもあり田舎に帰って蕎麦屋を始めようと思うと家内に相談しました。家内も後押ししてくれ決心出来ました。鶴来の蕎麦屋に入りお店を手伝いながら、鳥越の唐変木(とうへんぼく)の蕎麦打ち道場に通い蕎麦打ちの基本を学びました。そこで修業した仲間が県内で9人お店を出しています。とうへんぼく仲間として毎月1回定例会を持ち情報交換をしています。小牧の実家は明治21年に建てられた古い家です。ちょうど古民家ブームもあり、素人感覚でオープンしたのですがお客が来ないのです。そんな時、北国新聞中島支局の記者が125年の古民家で蕎麦屋オープンと写真入で取り上げてくれたのです。それがキッカケでテレビ朝日の人生の楽園に放映され、地元民放テレビ局3社、月刊誌アクタスで紹介されると、県内外からお客様が来てくれる様になりました。メディアが「蕎麦処くき」のこだわりや私の生き方を報道として取り上げてくれたお陰です。また中島には演劇堂があり、そんな関係で仲代達矢さんはもとより芸能人の方もよく見えられます。また観劇にこられる方が始まる前にお立ち寄り頂いたり、金沢、富山からの日帰り能登ツアーでご来店頂いております。



天せいろセット



古民家の店内


蕎麦の三たて


蕎麦の三たてという言葉があります。挽きたて、打ちたて、茹でたてが蕎麦の香りと味を引き出す必須条件なんですね。それで私は自家製粉に拘りました。まず平日、土日祝日、予約などを勘案してその日使う量を決めます。朝6時前から蕎麦の実を割り、石臼で粉挽きをします。それをふるいに掛けますが、私はメッシュの違うふるいを使い一つの蕎麦の実から一番粉、二番粉、三番粉と三種類の粉を作ります。一番粉が白色で旨みや甘みが高い最上級の更科粉です。この粉だけで打った蕎麦が更科そばと呼ばれます。私の蕎麦はこの三種をブレンドして香りとモッチリ感を極めようとその配合を研究してきました。蕎麦打ち出きる粉に仕立てたら、その日の湿度やそば粉の様子を手で感じながら水を回し、練り込みます。11時までにその日の蕎麦を打ち切ってしまいお客様に三たてのお蕎麦をお出しします。二八そばは蕎麦粉8割につなぎの小麦2割を混ぜます。十割そばは蕎麦粉だけでつなぎが入っていないので切れやすく水加減が難しく倍神経を使います。私は最初から蕎麦だけに拘るのではなく、地元のおいしい食材もぜひ活かしたいと思い、カキ貝や山菜を使った一品やコース料理も揃えました。53歳から入った蕎麦の道ですが、今お客様から「美味しかった」の一言に喜びを感じています。これからも美味しい蕎麦を目指して精進を重ねたいと思います。




ファミリーで


2017年取材

中島町小牧 蕎麦処くき  ☎66‐6690