こみみかわら版バックナンバー

第82回 私の仕事は「潜水士」です。

真剣に遊ぶ



私の仕事は「潜水士」です。
鎌村 実(かまむら みのる)58歳
潜水士歴40年 


潜水士の仕事とは


私の場合は、レジャーダイビングの指導と能登島の里海ガイド、プロインストラクター養成、
海難事故の救難救助を行っています。


日本航空学園の縁 


大阪府出身で高校は山梨県の日本航空高等学校を卒業しました。ここは道徳教育など人間力育成にも積極的に取組んでいます。その第二高校として2003年に日本航空高等学校石川を設立する際に恩師梅澤重雄、現理事長に声を掛けられ赴任して来ました。正規の教職ではなく人間力担当です。その翌年、ここ能登島でダイビングスクールを開校しました。そんな関係で現在も航空石川の潜水部を受け持ち、また併設する日本航空大学校で来春から新設する海洋コースの立上げに関わっています。


趣味が高じて 


元々はネットワークの設計技士で日本のインターネットの構築に携わり横浜神戸間での通信テストを行いました。ダイビングは18歳から始め、26歳で潜水士の国家資格を取得しました。37歳の時、コンピューター会社を立上げ、その事業部としてダイビングショップも経営し各地の海を潜っていました。そんな時に航空石川を立ち上げるから手伝えと言われ能登に来てみると、その海の素晴らしさに魅了され本格的にダイビングに打ち込もうと決意し会社を譲渡してしまいました。当時の武元七尾市長と能登島の高瀬町長にダイビングを通しての街づくりをプレゼンしました。タイミングよく能登島町がそのような構想を持っており野崎に拠点を置かせて頂きました。しかし、地元では過去に他所から来たダイバーがサザエなど海産物を獲っていくので、潜り=盗みというレッテルが貼られていて強い警戒感がありました。地元漁協の小幡組合長が「同じ海で仕事をする者に悪人はいない」と言って頂き救われた思いがしました。今は能登島で潜水するには私どもを通さなければならない仕組みになっており、逆に不法ダイバーを防ぐ役割も担っています。



プロもアマも楽しめる



海藻の宝庫


能登の里海


ここには全国から年間約三千人訪れます。ダイビング始めて3年程は熱帯魚系の海を好みますが、それに飽きた人がより趣き深い世界を求めます。ここは海草の宝庫で西風が吹くと富山湾の湧昇流に乗って珍しい魚が浅瀬に集まり、海草で繁殖行動を行い他では見られない生態が見られます。私は海草+写真というコンテンツを提供してきたので、この世界で能登島は海草の聖地といわれるまでになり多くのフォト派ダイバーが訪れます。そのため働き手が欲しく全国に求人しますが、自分が楽しみたいという遊び感覚で来る人が多く長続きしません。潜るのは手段で、遊びを提供することが仕事です。お客様もそれぞれ要望が違います。それに答えられる幅広い対応力が必要でその知識と見識を育成しなければなりません。ダイバーのメッカと言われるパラオや石垣島でも慢性的な人材不足です。全国のインストラクター養成の専門学校からインターンシップを受け入れ研修しますが、共通して不足しているものがあります。それは人との関わり方など人間力が弱いのです。プロ育成の入り口がレジャーからでなく、プロとしての人間力をも合わせて育成する教育機関の必要性を感じたことが航空大学校海洋コースに繋がったのです。13年経った今、救難救助や船のトラブルなどで警察や地元漁業者から連絡が入りますが、こういう形で地域貢献できることも嬉しく思っています。


2017年8月取材
能登島野崎町 能登島ダイビングリゾート 
☎84‐0081