こみみかわら版バックナンバー

第83回 私の仕事は「音楽療法専門士」です。

音で寄り添う



私の仕事は「音楽療法専門士」です。
勝木 恵子(かつき けいこ)35歳
仕事歴 10年


音楽療法専門士とは


私の場合は、地元の公民館や施設などに出向き、高齢者や、発達障害児と一緒に音楽を楽しみながら、コミュニケーション力を高めたり、生活の質の改善を促していく仕事をしています。


音楽療法


街にひとつピアノが置いてある部屋がある。そこには自由に出入りできて、そこでは何でも出来て、好きに集って楽しく過ごす。まず、そこへ出向くことが目的になる部屋。疎外感を減らす、そんな場所。発達障害の子が、日常の中で、遊びに行く場所として、映画や、キッズルームに行くのと同じ感覚で集まれる部屋。将来、そんな部屋が作れたらと思っています。音楽療法とは、一緒に歌ったり、楽器を叩いたり、体を動かしたりと、音楽と何かを同時に使うことで、脳の認知機能を活性化させます。そしてコミュニケーションの円滑化や、今まで出来なかった事が出来るようになるなど生活の質の向上を目指します。


きっかけ


小学生の時に七尾市児童合唱団に入り、御祓中では合唱部でした。小さい時から歌が好きで、鹿西高校3年から声楽の先生に師事し武蔵野音大に進みました。西部池袋線での通学途中、東京音楽療法専門学校の看板を目にし、音楽療法ってどんなことするのだろうと興味を持っていました。そんな時、大学の講義でアメリカの音楽療法のビデオを観たのです。障害児のビデオでした。言葉が出なく、流暢に喋れない子ども達が、打楽器を使って会話しています。音楽が共通言語になっていることに強く心を打たれ、「あっ!私のやるのはこれだ!」と思ったのです。それで大学を卒業し音楽療法専門学校へ進みました。音大では硬く決められた方程式の中で授業が進められますが、専門学校ではミュージカルをやっていた人、専業主婦、保育士など様々な分野の人が集まり、もっている要素が違うので面白かったです。そんな人とチームを組んで2年間毎週、高齢者と障害児の施設に実習に出かけました。



放課後等デイサービスあおばにて


故郷へ帰り


就職は故郷でと石川県福祉の合同セミナーに参加し、施設のブースで相談しましたが、音楽療法を知っている人は3割でした。石川県音楽療法の会で、七尾市出身でフリーランスの方に相談したところ、中島の寿老園と社会福祉法人みのり園を紹介していただき、七尾で活動を始めることが出来ました。音楽療法は正解がない世界です。公民館などスポットでの依頼には、楽しくひと時を過ごすことを目的にし、施設で継続的に行う時は、コミュニケーションの円滑化、出来ないことが出来るようになるなど、生活の質の向上を目指します。
対象に合わせたプログラムは準備するのですが、場の空気を読んでの即興力が求められます。療法の最後は言葉を使わず楽器だけで、即興でやり取りして収めなければなりません。到底無理だと思われる状況からでも意気が合って収まった時、子どもは気持ちの良い顔をし、お互いに爽快感があります。全員で終わったという一体感が、実生活の中で人に合わせるという事を学んでいくことに繋がります。音で寄り添っていくそんな方法があることを多くの人に知って頂き、広めて行きたいと思っています。



七尾市いきいき講座(介護予防)


万行町 かつきけいこ音楽教室
☎080-3748-5714

2017年取材