こみみかわら版バックナンバー

第101回 私の仕事は『児童発達支援管理責任者』です。


教えるつもりが教えられ

仕事歴6年 山花 剛さん 62歳

転機到来

自分が一番傲慢だったんです。私は甲子園を目指し中島中学から星稜高校へ進み、あの山下監督に厳しく鍛えられ以来三十年間の野球人生を送って来ました。金沢経済大学で十年、北陸大学で十年、航空石川で三年間の監督人生でした。監督として、教員として学生に素直さと謙虚さを説いてきましたが、今の仕事に就きそんなこと言っている自分が一番傲慢だったと気付かされました。教員の最後は七尾特別支援学校での五年間でした。この時の経験が人生の転機になりました。

着任した初日、一日黙って見ていて下さいと言われ見学したのですが、カルチャーショックでした。様々な支援が必要な生徒に寄り添い、親身に対応している姿は今までの自分の世界とは異なっていたのです。
二日目、生徒の紙パンツを普通のパンツにはき替えようとしていた時にその子がおもらしをしたのです。つい独り言で「あぁー、言ってやー」と呟いた時、後ろで見ていた先生から「言えたらあなたが要らないのです…」とその一言で目が覚めたのです。その通りだと思い、「よし!やってやろう」と腹を決めました。

放課後デイ

五年間、この子たちの手となり足となり、口となって、成長を願い接して来ました。些細な事であっても出来ていなかったことが出来ると、成長の一助になっていることを実感し野球での成長を見るより感動がありました。それでも支援学校で出来る事には限界があります。

私は退職を機に一人一人の能力に寄り添い学校と家庭を繋ぐ役割を担う放課後デイを立ち上げることにし、昨年七尾で五番目の放課後デイサービスを開所したところです。その時相談した恩師から、教育とは、教える、躾ける、押し付けるのではなく、得意な所を引き出して、育てる事だよと助言を頂きました。それで出来るだけそれぞれの個性に合わせられるようプログラムを考えています。幸い場所が田舎なので(笑)、田んぼ、畑、運動広場も併設して出来るだけ自然と触れ合える環境にしています。



アットホーム!

活かされて生きる

スタッフは支援学校の元先生や看護師さんなどで経験と智慧があります。日頃色々と相談しながら運営を心がけていますが、先月子どもたちとその家族で神戸へ行って来ました。甲子園の近くに中島町出身の先生がいる放課後デイサービスがあり、そのご縁で都会と田舎が交流できればと話が進んだのです。運よく甲子園で星稜高校の一回戦があり、みんなで観戦して盛り上がりました。

現在小二から高二までの生徒が集まりますが、私自身まだまだ修業の身だと感じています。それは一人一人の個性を見極めるには、とにかく口出しせず待たなければなりません。あれやれ、これやれ、では成果が出ないのです。でも待つ仕事は楽なようで結構しんどいです(笑)。

先日高校時代の山下監督から金沢工業大学の野球部監督就任の要請がありました。なぜ私なのですか?と訊ねると、日大のアメフト問題などスポーツ界で不祥事が相次ぐ中、勝負だけでなく、人としてのモラル教育がやれる監督を紹介してほしいと頼まれたからお前なのだ、と言って頂きました。スタッフの理解と応援もあり秋から監督を引き受ける予定です。野球で傲慢だった私が、子どもたちによって人間的に成長させられた事で、また野球の世界から声がかかるという因縁を不思議に感じています。



才能を育てる

中島町 放課後デイサービス・サンフラワー
☎66-6010