こみみかわら版バックナンバー

私の仕事は『建具職人』です

職業-建具職人-

建具職人の仕事とは


ドアや障子、ふすま、らんまなどを寸法に合わせて作ります。木の選別から始まり、材木の中から節が無く目の通った綺麗な所だけを選び出し部材にしていきます。魚で言うと、マグロのトロの部分を取り出し、綺麗に刺身にして、器に彩り良く盛り付けていく、そんな感じで建具も一本の木から家の座敷に収まっていきます。



温故知新


仕事の合間に各地の寺院などを訪ね、昔の建築様式を見て回ることを心がけています。それは伝統の建築様式を見ることで知識が増え感性が磨かれていくからです。その上で現代の新しきに挑戦することが可能になると思っています。
お客様の望むものを作るのですが、時としてそれが斬新なものであっても外してはいけない決まりごとがあります。そういった時に建具職人とて意見を述べつつ、お客様と共に伝統に裏打ちされた機能性、デザイン性を追求します。



損得より善悪


私は金沢の生まれで金沢で内装の仕事をしていました。その時に出合い結婚した妻の実家が松田建具でした。仕事場を見た時、建具の奥深さを感じ興味が湧いたのです。それから二年間心が揺れ動きます。十五年間続けている内装の仕事を辞める勇気がなかったんです。二人目の出産で家内が実家に戻るとき「今しかない」と感じ、踏ん切りをつけました。家内は「ほんとかいね!」と驚いていました(笑)。知り合いがいない、道が分からない、仕事もわからないからのスタートでしたが、それらは全て時間が解決してくれました。その間もっとも大切な職人としての道を教えてくれたのが松田の親父です。物事を決断していくときの姿は損得ではなく善悪です。人の道から外れるような事にはとても厳しい親方です。建具の奥深さもさることながら、人は生き様に奥深きものがあり、そこで人生が決まっていくんだと感じています。



建具の輝き


昔は大工さんが家を建て、それに合わせて戸を作ったものです。今は既製品の戸に合わせた家が建ち、ベニヤ製の安くて軽い戸が普及してカタログから色や規格を選んでいます。和室が少なく壁が多い家が多くなり、昔は五十坪の家で百枚の戸が入ったものですが今は二十枚くらいでしょうか。和室が私たちの出番です。家が完成し座敷に戸を入れた瞬間、家全体が引締まり輝きを放ちます。私たち職人も、家の人も、「わぁー、すごいなぁー」と声が上がります。昔は引っ越しても戸だけは持っていったと聞きますから、本物志向のりっぱな戸だったのですね。近年若い人が個性を建具に求めオーダーが増えています。職人が高齢化していく中、若い世代が建具の技を継承していく必要を感じます。伝統技の存続と採算のバランスは悩むところですが、このことも本当の善がどこにあるのか見極めたいと思います。




松田建具製作所 0767‐76‐2151